橋本病とは?
症状・原因・検査をやさしく解説
橋本病は、首にある「甲状腺(こうじょうせん)」に、慢性的な炎症が起こる病気です。炎症が進んで甲状腺ホルモンが足りなくなり、無気力、疲れやすさ、むくみ、体重増加などの症状が出る人もいます。 このページでは、橋本病で体に何が起きるのか(どうなる)、なぜそうなるのか(理由)を、できるだけやさしい言葉で説明します。
Web上に公開されている情報をもとに作成しております。万が一、間違いがあればご指摘いただけると幸いです。
作成日: 2026年9月30日
橋本病とは
どうなる橋本病は、体の新陳代謝(体の中の化学反応が進む速さ)を活発にする「甲状腺ホルモン」が、足りなくなることがある病気です。 甲状腺ホルモンが足りなくなる(甲状腺機能低下症になる)と、全身の代謝がゆっくりになり、無気力・むくみ・寒がりなどの変化が起こります。
たとえ甲状腺ホルモンが足りなくなったときは、体がずっとブレーキを踏みっぱなしのような状態、と考えるとイメージしやすくなります。
理由甲状腺(こうじょうせん)は、首の前、のどぼとけの下にある臓器で、甲状腺ホルモンを作っています。 橋本病では、体を守るはずの「免疫」が、何らかの理由で甲状腺を攻撃し続け、炎症が続く状態になります。これを「自己免疫」と呼びます。 この炎症によって甲状腺の組織が少しずつ壊されると、甲状腺ホルモンが作られにくくなります。
補足これらの症状は、更年期障害やうつ、認知症など、他の状態と似ていて間違われることがあるとされています。 また、橋本病でも、甲状腺の働きが正常なままの方もいらっしゃり、その場合ホルモン不足による症状はあらわれません。
補足橋本病と診断されていた人が、甲状腺の働きが高まってバセドウ病と診断されることがあるとされています。また逆に、バセドウ病の人が、治療中に甲状腺の働きが次第に低下し、橋本病と診断されることもあるとされています。
橋本病の症状
どうなる次のような変化が出ることがあります。
- 無気力、疲れやすさ
- 全身のむくみ
- 寒がり
- 体重増加
- 便秘
- かすれ声
- 皮膚の乾燥、汗が少なくなる、髪の毛が減る
- 月経の量が多くなる、長く続く(女性)
- 甲状腺の腫れ(びまん性甲状腺腫)— 甲状腺全体が腫れて大きくなること
- 首の圧迫感・違和感
理由甲状腺ホルモンは体の代謝(からだの中の化学反応が進む速さ)を調節しているため、足りなくなると全身の代謝がゆっくりになり、無気力・むくみ・寒がりなどの変化が起こります。むくみは、指で押してへこませても元に戻るのが特徴とされています。
理由甲状腺の腫れは、免疫の細胞が甲状腺に集まって炎症が起こることで生じるもので、甲状腺ホルモンが正常なままの人にも見つかることがあります。 首の圧迫感・違和感は、この腫れによって生じることがあります。 腫れは比較的かたく、表面がゴツゴツしている傾向があり、ゆっくり進むため自分では気づきにくいとされています。
橋本病の原因
どうなる橋本病では、体を守るはずの免疫が、自分の甲状腺を攻撃してしまいます。これを「自己免疫」と呼びます(仕組みは、上の「橋本病とは」をご覧ください)。 なぜ、体を守るしくみ(免疫)が間違いを起こすかはわかっていません。
考えられていること甲状腺ホルモンの材料となる「ヨウ素(ヨード)」のとりすぎが、橋本病や甲状腺機能低下症にかかわると考えられています。 強いストレス、妊娠・出産、ヨードのとりすぎなどをきっかけに甲状腺ホルモンが不足する状態になり、橋本病が見つかることがあるとも考えられています。
補足橋本病の人の血液中には、甲状腺の成分に対する自己抗体(抗サイログロブリン抗体・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)が見つかることが多いとされています。
橋本病の検査で分かること
どうなる橋本病は、甲状腺全体の腫れ(びまん性甲状腺腫)と、甲状腺に対する自己抗体があることをもとに診断します。
補足日本甲状腺学会の診断ガイドライン(2024年11月改定)では、臨床所見として「びまん性甲状腺腫大(萎縮の場合もある)」、検査所見として「抗TPO抗体陽性」「抗サイログロブリン抗体陽性」「細胞診でリンパ球浸潤」が挙げられています。
- 血液検査 — 甲状腺ホルモン(FreeT3・FreeT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測り、そのバランスで甲状腺の働きを調べます。 甲状腺の働きが弱まりはじめると、まずTSHの値が高くなるとされています。 あわせて、甲状腺に対する自己抗体である抗サイログロブリン抗体(TgAb)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)の有無を確認します。 これらの自己抗体は、どちらか一方だけ陽性のことも、どちらも検出されないこともあるとされています。
- 超音波(エコー)検査 — 甲状腺が腫れていないか、腫瘍が合併していないかを確認します。 甲状腺内部のエコーが暗く見えたり、均一でなく見えたりすることは、橋本病を疑う所見のひとつとされています。
補足甲状腺ホルモンが低い状態が続くと、血液中のコレステロール値が高くなることがあります。 一見甲状腺には関係のなさそうな肝機能(AST・ALT)の値から、橋本病が見つかる場合もあるとされています。
補足診断のときは、バセドウ病を除外して考えます。 それぞれの項目の基準値は記録できる項目のページをご覧ください。
橋本病と、バセドウ病のちがい
どうなるバセドウ病も橋本病も、自己免疫によって甲状腺に異常が起こる点は共通していますが、変化の向きが逆の病気です。バセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰になる病気で、橋本病は甲状腺ホルモンが不足することがある病気です。
用語かんたん解説
- 甲状腺(こうじょうせん)
- 首の前、のどぼとけの下にある臓器。甲状腺ホルモンを作っています。
- 甲状腺ホルモン
- 甲状腺が作るホルモン。体の代謝(からだの中の化学反応が進む速さ)を調節します。
- TSH(甲状腺刺激ホルモン)
- 脳の下垂体で作られ、甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンを作らせるホルモン。血液検査で調べます。
- 甲状腺機能低下症
- 血液中の甲状腺ホルモンが不足した状態のこと。橋本病は、その代表的な原因の病気とされています。
- 潜在性甲状腺機能低下症
- FreeT4は基準範囲内なのに、TSHだけが基準より高い状態のこと。
- びまん性甲状腺腫(びまんせいこうじょうせんしゅ)
- 甲状腺全体が腫れて大きくなること。「びまん」は「全体に広がる」という意味です。
- リンパ球浸潤(りんぱきゅうしんじゅん)
- 白血球の一種であるリンパ球が、甲状腺の中に入り込むこと。橋本病の特徴のひとつです。
- 自己免疫疾患・自己抗体
- 細菌やウイルスなどから体を守るための免疫が、自分の臓器・細胞を標的にしてしまうことで起きる病気の総称が自己免疫疾患。そのときできる、自分の体に対する抗体を自己抗体といいます。
- 抗TPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)・抗サイログロブリン抗体
- 甲状腺にあるたんぱく成分に対してできる自己抗体。血液検査で調べます。
- ヨウ素(ヨード)
- 甲状腺ホルモンの材料になる成分。昆布などの海藻に多く含まれます。
- 合成T4製剤(レボチロキシン、商品名チラーヂンS)
- 不足した甲状腺ホルモンを補う飲み薬。
橋本病の治療について
どうなる甲状腺ホルモンが足りない場合は、飲み薬でホルモンを補う「甲状腺ホルモン薬(合成T4製剤、レボチロキシン)」を使います。
よくある質問
- 橋本病と慢性甲状腺炎は別の病気ですか?
- どうなるいいえ、同じ病気の別の呼び名です。
- 橋本病=甲状腺機能低下症ですか?
- どうなる同じではありません。理由橋本病でも、甲状腺ホルモンが正常なまま経過する人がいるためです。
- 男性も橋本病になりますか?
- どうなるはい、なります。補足女性に多い病気ですが、男性の患者さんもいます。
- 橋本病になりやすい体質は遺伝しますか?
- どうなるなりやすい体質は遺伝すると考えられていますが、必ず発病するわけではありません。理由何らかの誘因が加わって発病すると説明されているためです。
- 症状がないのに橋本病と言われました
- どうなる甲状腺の働きが正常なままの橋本病もあります。理由その場合、ホルモン不足による症状はあらわれません。ただし、甲状腺の腫れは、ホルモンが正常なままでも見つかることがあります。
- 健診で甲状腺の腫れを指摘されました
- どうなる健診での指摘が、診断のきっかけになることがあります。
- バセドウ病とどう違うのですか?
- どうなるバセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰になる病気、橋本病は不足することがある病気です。くわしくは、上の「橋本病と、バセドウ病のちがい」をご覧ください。
- 気になる症状があるときは?
- どうなる自己判断せず、専門の医療機関を受診することがすすめられています。
橋本病を公表している方々
橋本病を公表している方の体験談を紹介します。掲載は、本人のインタビュー・体験談に基づくものです。
- 宮村優子(声優)— バセドウ病(記事中の表記は「バセドー病」)と橋本病の両方を、数年の間に経験したことを、自身の体験談として語っています。
- 長谷川理恵(モデル)— 2016年に橋本病と診断されたことを、自身の体験談として語っています。
関連書籍
橋本病に関する書籍の紹介です。書名・著者・出版社は、国立国会図書館サーチの書誌情報に基づきます。内容の推奨・監修ではなく、書誌情報の紹介です。
出典・参考文献
引用元は、本ページの内容を保証するものではありません。
- 隈病院 甲状腺ナビ「橋本病(慢性甲状腺炎)」 thyroid-navi.kuma-h.or.jp
- 医療法人 野口病院「慢性甲状腺炎(橋本病)」 noguchi-med.or.jp
- 日本内分泌学会「橋本病(慢性甲状腺炎)」 j-endo.jp
- 伊藤病院グループ「橋本病」 ito-hospital-group.jp
- 長崎甲状腺クリニック「橋本病(慢性甲状腺炎)」 nagasaki-clinic.com
- MSDマニュアル家庭版「橋本病(自己免疫性甲状腺炎)」 msdmanuals.com
- 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024(慢性甲状腺炎(橋本病)の診断ガイドライン)」 japanthyroid.jp
- 隈病院 甲状腺ナビ「【橋本病】首が太くなったかも?首に現れる症状を隈病院の医師が解説」 thyroid-navi.kuma-h.or.jp
- 日本内分泌学会「潜在性甲状腺機能異常」 j-endo.jp
- 隈病院 甲状腺ナビ「橋本病の診断基準(診断ガイドライン)」 thyroid-navi.kuma-h.or.jp
- 日刊ゲンダイDIGITAL「声優の宮村優子さんは『バセドー病』と『橋本病』の両方を経験…壮絶闘病を語る」(2024年10月28日公開) nikkan-gendai.com
- 同上・2ページ目 nikkan-gendai.com
- CHANTO WEB「長谷川理恵『更年期障害ではなく、橋本病だった』寝れば元気になる私が無気力になって過ごした日々」(2024年2月3日公開) chanto.jp.net
- 国立国会図書館サーチ 書誌情報「橋本病と私」 ndlsearch.ndl.go.jp
- 国立国会図書館サーチ 書誌情報「ある日突然、起きられなくなりました ~甲状腺機能低下症との闘い~」 ndlsearch.ndl.go.jp
- 長崎甲状腺クリニック「甲状腺の基本(甲状腺ホルモンの合成・調節)」 nagasaki-clinic.com
- 隈病院 甲状腺ナビ「【隈病院 専門医監修】バセドウ病と橋本病の関係を解説|移行の仕組みと共通の体質とは」(2026年2月27日公開) thyroid-navi.kuma-h.or.jp
- MSDマニュアル家庭版「甲状腺機能低下症」 msdmanuals.com
ishiteraでできること
橋本病の血液検査値(TSH・FreeT3・FreeT4)・体重を記録して、経過をグラフで振り返りたい方は、ishiteraの記録機能もあわせてご利用ください。